2024年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
日本麻酔科学会公開の専門医試験過去問はHPから御覧ください(日本麻酔科学会HP)。
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問1 解答例
-1) 高齢であること(78歳)
-2) せん妄の既往(4年前の脊椎固定術後にせん妄)
-3) 複数の内服薬(降圧薬や安定薬などを含む)によるポリファーマシー
-4) 術前の痛み
解説
参考サイト:https://anesth.or.jp/files/pdf/guideline_prevention_postoperative_delirium_elderly.pdf
他にも術式自体もリスク因子です。
ちなみに、術後せん妄を生じやすいとされる術式は,「大腿骨骨折手術」,「人工膝または股関節置換術」,「脊椎手術」,「大動脈手術」,「冠動脈バイパス術」です。
せん妄は最近、頻出のトピックです。しっかり抑えましょう。
問2 解答例
フレイルとは:加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態
2項目該当するので、フレイルではなく、プレフレイルに該当します。
解説
フレイルの基準は下のようになってます。
1. 体重減少
6か月で、2kg以上の(意図しない)体重減少
2. 筋力低下
握力:男性<28kg、女性<18kg
3.疲労感
(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
4.歩行速度
通常歩行速度<1.0m/秒
5.身体活動
①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答
※ 5つの評価基準のうち、3項目以上に該当するものをフレイル(Frail)、1項目または2項目に該当するものをプレフレイル(Prefrail)、いずれも該当しないものを健常(Robust)とする。
参考文献:日本版フレイル基準(J-CHS基準)
問3 解答例
-例:大腿神経または内転筋管ブロックの併用
-利点:
・的確な下肢鎮痛を得られ、全身性鎮静薬やオピオイドの使用を減らせる
・呼吸抑制やせん妄リスクを軽減できる
-欠点:
・ブロック範囲が限られており、術後痛を十分に抑えられない場合がある
・穿刺による神経損傷や血腫のリスク(抗凝固状態にも注意が必要)
問4 解答例
-「術後せん妄は、一時的に意識や見当識が混乱する状態で、高齢の方やお薬をたくさん使う場合に起こりやすくなります。ただ一過性であり、適切に対策すれば回復することが多いです。手術中から術後せん妄が起こりにくいように痛みを和らげる方法を工夫し、なるべくリラックスして眠れ、昼夜の区別をつけるように管理します。もし症状が出ても、早めに対応できるよう私たちが見守りますのでご安心ください。」
問5 解答例
1) 縫工筋:大腿動脈の上に位置する筋肉
2) 長内転筋:大腿動脈の内側に位置する筋肉
3) ブロック部位:大腿動脈のすぐ外側の伏在神経付近
問6 解答例
-1) 低血圧 ⇨ 臓器虚血、術後せん妄のリスクとなる。
-2) BIS値 ⇨ 波形がBurst Suppressionである。深鎮静・過度な麻酔薬投与を避け、せん妄予防(最小限の麻酔深度で合併症を減らす)
-3) 体温 ⇨ 低体温は凝固能低下・薬物代謝遅延・せん妄につながる
問7 解答例
せん妄です
解説
CAMの診断における4つの主要項目
CAMを使用してせん妄を評価する際には、以下の4つの特徴が重視されます。
1.急性の発症と変動する経過
症状が突然発生するか、短期間で悪化すること。
症状の重さが時間とともに変動することが特徴です。
2.注意障害
注意を維持できない、または注意を向けることが難しい状況。
3.思考の混乱
会話がまとまりを欠いたり、不合理であったりすること。
思考の論理性が失われるケースが含まれます。
4.意識レベルの変化
通常の覚醒レベルからの逸脱(例:過度に眠い、または過度に興奮している状態)。
CAM診断基準
せん妄を診断するには以下の条件を満たす必要があります:
1.急性の発症と変動する経過 (必須条件)
2.注意障害 (必須条件)
3.思考の混乱、または意識レベルの変化 (いずれか1つ以上)
問8 解答例
-1) 環境整備:部屋の照明や昼夜のメリハリをつけ、家族やスタッフが頻回に声をかけて安心感を与える
-2) 睡眠衛生の確保:夜間の過剰な騒音や照明を避ける。早期離床、リハビリを開始する。
-3) 鎮痛の最適化:痛みによる不穏やせん妄を防ぐ
-4) 原因検索と補正:電解質異常や低酸素、感染などの全身状態を確認し、異常があれば即対応する。