2024年解答例・解説 口頭試問 1-2

口頭試問

2024年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。

公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。

日本麻酔科学会公開の専門医試験過去問はHPから御覧ください(日本麻酔科学会HP)。

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1) 肥満(BMI 43.5)
問題となる理由
・気道管理の難しさ:肥満患者では解剖学的にマスク換気や気管挿管が困難となりやすい。
・呼吸機能低下:肥満に伴う胸壁や肺コンプライアンスの低下,無気肺のリスク増大。術後の呼吸管理にも注意が必要。
2) 睡眠時無呼吸症候群(疑い)
問題となる理由
・術中・術後の呼吸抑制リスク:麻酔薬や鎮静薬でさらに上気道が虚脱しやすくなり,無呼吸となるリスクが増える。
・抜管後トラブル:リカバリー室や病棟で低酸素・高炭酸ガス血症に陥る可能性。
3) 喫煙歴(1日10本×10年)
問題となる理由
・肺合併症リスク:喫煙者は気道過敏性や分泌物増加により,術後肺炎や気道合併症が増加する。
・創傷治癒遅延:喫煙は末梢血流障害や酸素運搬能低下を招き,術後創の治癒を遅らせる。
・血管収縮による循環動態変化:周術期の循環変動に悪影響を及ぼす。

1) プロポフォール導入時
実体重を指標とする
理由:効果部位濃度を迅速に上げたいため。
2) ロクロニウム投与時
除脂肪体重を指標とする
理由:筋弛緩薬は主に血中から神経筋接合部へ移行して作用するが,肥満による分布容積増加はそれほど大きくないため。(もちろん筋弛緩モニタリングによる評価は必須です。麻酔導入時の気道確保のために、より迅速な効果発現を得たいという意図があれば実体重換算でもいいと思います。)
3) スガマデクス投与時
実体重を指標とする
理由: 理想体重換算量では回復に時間を要し、再クラーレ化が起こりやすくなるため。

1) 現在の状況の判断
・呼吸困難や吸気性喘鳴(stridor)は上気道閉塞を疑い、その原因としては声門の浮腫、甲状腺全摘術後の頸部血腫を疑う。

2) 対応
・緊急気道確保の準備。
– 挿管の難易度が高い可能性があり,輪状甲状膜穿刺や緊急気管切開も視野に入れる。
・創部を開放する準備を行う
・麻酔科・外科・看護師長などに急いでコールする。
・同時並行で酸素投与,バイタルモニタリングを行う。
・迅速に手術室やICUへ移動する準備を行う。

・ただちに創部開放による減圧
・減圧ができなそうなら緊急気道確保(挿管or輪状甲状膜穿刺)

解説

甲状腺・副甲状腺疾患の手術後に起きる術後出血は,約1~2%に起きると言われています。

麻酔科の〇〇と申します。再手術お疲れ様でした。頸部に血腫ができており、それを取り除く必要があったため、再手術を行いました。気道が狭くなっていたため、麻酔をかけて寝てから呼吸するためのチューブを入れることは危険と判断し、起きたままチューブを入れるという選択をさせていただきました。本来は書面で同意書を取るのですが、緊急の判断であったため、口頭で同意をとらせて頂きました。十分な説明ができておらず苦しい思いをさせてしまったかも知れません。大変申し訳ございませんでした。

1) 事象の名称
・トルソー徴候(Trousseau’s sign)

2) 心電図所見
・QT延長

3) 原因
・術後低カルシウム血症

解説

1)  事象の名称
・トルソー徴候(Trousseau’s sign)
・上腕をマンシェットで圧迫し虚血状態を作ると,手指が内転・掌屈し独特の“助産師の手”様ポジションになる。
・低カルシウム血症の代表的所見。

2) 特徴的な心電図所見
・QT延長
・低Ca血症では再分極が延長し,QT間隔が延長する。
〜〜QT延長の定義、鑑別もすらすら言えるようにしておきましょう〜〜

3) 原因
・術後低カルシウム血症(副甲状腺機能低下あるいは摘出)
・甲状腺全摘術で副甲状腺の血流が途絶したり,摘出されてしまったりすることがある。
・術直後~数日後に低Ca血症をきたし,しびれ,けいれん,テタニーなどを起こしやすい。
・対応策:血清Ca値を測定し,必要に応じてCa製剤や活性型ビタミンDを補充する。

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