2022年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
日本麻酔科学会公開の専門医試験過去問はHPから御覧ください(日本麻酔科学会HP)。
DL方法:ログイン⇨認定施設申請⇨過去問(口頭試問)
問1 解答例
-1) 緊急手術かどうかを確認する
-2) 循環器緊急症(ACS、大動脈解離など)の有無を確認する
-3) 手術リスクを評価する(低・中・高リスク手術の分類)
-4) 中リスク以上であれば RCRI で評価する
-5) DASI スコアなどを用いて運動耐用能を評価する
参考サイト:https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_hiraoka.pdf
問2 解答例
-1) 敗血症性ショック:動脈圧ラインや中心静脈圧ラインを確保、細胞外液で補液する
-2) 頻回嘔吐:迅速導入または意識下挿管の準備、H₂受容体拮抗薬(ガスター、ファモチジンなど)の投与、胃管挿入を行う
-3) 心筋梗塞後・心機能低下:最近の発作歴や治療歴を確認、心エコー・心電図で評価、冠動脈血管拡張薬を準備する
-4) 糖尿病(SGLT2阻害薬内服あり):周術期ケトアシドーシスに注意、血糖コントロールを確認、術中インスリン投与を準備する
-5) DIC傾向:FFPや血小板製剤の輸血体制を確認する
-6) 腎機能障害:術後透析の可能性を考慮し、UKカテーテルを挿入する
-7) 低体温:保温、輸液・輸血の加温を行う
-8) 高カリウム血症:グルコース・インスリン療法の準備、カルシウム製剤やK除去用フィルターを準備する
問3 解答例
-1)敗血症による導入後、さらに不安定な循環動態になる可能性が高いため、麻酔導入前に動脈圧ライン、中心静脈圧ラインを確保し、
導入は血圧低下の少ないミダゾラム、フェンタニル、ロクロニウムを投与し、ノルアドレナリンなどの血管収縮薬投与できる準備をしておく。
-2)誤嚥のリスクが高いため、迅速導入を行う。嘔吐が万が一起きてもすぐ吸引できるように準備しておく。
問4 解答例
-1) 細胞外液によるボリューム負荷(3時間以内に 30 mL/kg の細胞外液投与)
-2) 血管収縮薬の使用(第一選択はノルアドレナリン、改善しなければバソプレシンを追加)
-3) 頭低位とし循環血流を維持する
-4) アシドーシスを補正する
問5 解答例
-1) GI療法:グルコース 5 g に対してインスリン 1 単位程度を投与する
-2) フロセミド:20 mg から静注で投与する
-3) カルシウム製剤:2%塩化カルシウム 5–10 mL、または 8.5%グルコン酸カルシウム 5–10 mL を静注する
-4) 血液透析を行う
-5) 炭酸水素ナトリウム(メイロン):pH 補正目的で投与する
・メイロン静注 8.4% の場合
必要量 (mL) = 不足塩基量 (mEq/L) × 0.2 × 体重 (kg) を目安に分割投与する
問6 解答例
-0) モニターの情報が正しいか確認し、総頸動脈を触知する
-1) ただちに CPR を開始する(胸骨圧迫・換気、100%酸素投与)
-2) 血圧低下を助長する薬剤(鎮静薬、麻薬など)を中止する
-3) 急速輸液・輸血を開始し、出血を想定して速やかに補正する
-4) できるだけ早くアドレナリン(エピネフリン)を投与する(1 mg 静注、3〜5分ごとに繰り返す)
-5) 周囲スタッフに役割分担を依頼する
・応援要請(他の麻酔科医や ICU チームなど)
・記録係
・タイムキーパー(薬剤投与・CPR 時間管理)
・除細動器準備(VF/VT 移行に備える)
問7 解答例
麻酔を担当しました〇〇です。術前にもお話しさせていただきましたが、心臓の動きが悪いこと、敗血症という状態で全身状態が不安定なことにより、ICUで心臓が一時的に止まってしまいました。すぐに蘇生をおこない先ほど意識を一時的に取り戻しましたが、急変する可能性も否定できません。今後も慎重に全身管理させていただきますので、呼吸するためのチューブを気管に入れたまま、人工呼吸で管理させていただいている状態です。心配なこと、ご不明点などありましたら些細なことでも説明させていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。