2024年解答例・解説 口頭試問 2-1

口頭試問

2024年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。

公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。

日本麻酔科学会公開の専門医試験過去問はHPから御覧ください(日本麻酔科学会HP)。

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・脳血管手術を先行する場合のリスク(2つ)
(1) 大動脈弁狭窄症が未修正のまま長時間の全身麻酔・手術負荷にさらされることで、術中・術後に重篤な心不全や低血圧、冠虚血を起こす危険が高い
(2) 術後の管理中に心臓合併症(急性左心不全、致死性不整脈など)が発生する可能性があり、脳外科的管理との両立が困難になる

・心臓手術を先行する場合のリスク(2つ)
(1) 人工心肺使用や抗凝固療法の導入で、後日予定される脳血管手術時に出血リスクが増大する
(2) 大動脈操作や心臓手術そのものに伴う脳塞栓・脳梗塞のリスクが高まり、術後の脳機能障害を来す可能性がある

解説

一般的には大動脈弁狭窄症の手術を優先することが多いようですが、どちらを優先するという決まりはないみたいです。

まとめると、
・脳血管手術を先に行うと、未修正のASで手術負荷を受けるため心不全や不整脈リスクが高い
・心臓手術を先に行うと、抗凝固療法による出血リスクや術中操作による脳塞栓リスクが増大する

ということになります。

1. 左室前負荷(Preload)
管理目標:適切に維持(やや高めを推奨)

理由:
大動脈弁狭窄により左室の後負荷が増大し、左室充満圧の維持が重要。

左室は拡張機能が低下しており、前負荷が不足すると心拍出量(CO)が低下する。

低血圧や循環不全を防ぐため、十分な静脈還流を確保する。

2. 心拍数(Heart Rate)
管理目標:50~70回/分程度の低めを維持

理由:

大動脈弁狭窄では左室が肥大し、拡張機能が低下しているため、心拍数が速すぎると拡張時間が短くなり、左室充満が不十分となる。

一方で、心拍数が遅すぎると心拍出量が低下するため、適度な範囲で管理する。

洞調律の維持が重要であり、不整脈(特に心房細動)は左室充満の低下を招くため、回避する。

3. 末梢血管抵抗(Systemic Vascular Resistance, SVR)
管理目標:適切に維持(過度な低下を回避)

理由:

大動脈弁狭窄では後負荷が高いため、過度な血管拡張(SVR低下)は冠灌流圧の低下を招き、心筋虚血のリスクが高まる。

一方で、過度な血管収縮も後負荷を増大させるため、適切な範囲で管理する必要がある。

血圧を維持し、冠動脈の灌流を保つために適度なSVRが求められる。

4. 心収縮力(Contractility)
管理目標:通常レベルを維持(過度な増強を避ける)

理由:

大動脈弁狭窄では心筋が肥大しており、過度な収縮力の増強は心筋の酸素消費を増加させ、虚血のリスクを高める。

一方で、収縮力が低下しすぎると心拍出量が減少し、血圧低下を招く。

①肺動脈カテーテル:SvO2、PAP、PAWP、CVPを評価し前負荷・後負荷や右心機能を把握します
②フロートラック:SVV、SVを評価し左心室の収縮力や前負荷の状態を把握します。
③NIRS:低心拍出や低血圧状態での脳虚血を見逃さないために必要です。
④中心静脈カテーテル:ScvO2、CVPで酸素需要、前負荷の状態を評価します。

不安定な循環動態になる可能性が高いため、麻酔導入前に動脈圧ライン、中心静脈圧ラインを確保し、ミダゾラム0.1mg/kg、フェンタニル100ug ロクロニウム70mgで導入します。血圧低下にすぐ対応できるよう血管収縮薬は準備します。導入時に少量投与してもいいかもしれません。

大動脈弁輪径:左から2番目

STジャンクション径:右から2番目

解説

左から2番目:annulus
左から3番目:sinus of Valsalva
左から4番目:sinotubular junction
左から5番目:proximal ascending aorta

となります。

・rSO₂が20%低下

モニターが外れていないか確認
TEEで残存空気の量を確認
動脈血酸素分圧(PaO₂)、酸素飽和度(SpO₂)
ヘモグロビン濃度(貧血の有無)
換気状態(PaCO₂の上昇による脳血流低下の可能性)
体温
などを確認します。

麻酔科の〇〇と申します。今、ご本人は、手術後の影響で、一時的に意識が混乱し、術後せん妄という状態になっています。これは高齢の方や大きな手術の後には50%ほどで起こるとも言われておりますが、一過性のものです。原因としては手術のストレスや薬の影響、ご年齢などが考えられます。通常は数日で改善しますが、ご家族のそばなど落ち着いた環境で過ごすことが大切です。必要に応じて治療を行いながら、経過を慎重に見守りますのでよろしくお願いします。

解説

最近、頻出のせん妄ですね。

今回は問われていませんが、せん妄の予防策としては以下があります。

①家族の付き添い
②ベンゾジアゼピン系の使用を控える
③適切な鎮痛と鎮静
④環境調整(アラーム音を静かにする、日差し明るさの調整)
⑤不必要な身体抑制の防止、長期の尿道バルーン挿入の防止
⑥早期離床・リハビリテーション
⑦せん妄の評価と早期発見(CAM-ICUスコアなどの評価)
⑧時計、カレンダーを用いたオリエンテーションの実施

せん妄についての文献も一読するといいかも:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcs/38/1/38_28/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/42/5/42_510/_pdf/-char/ja

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