2022年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
日本麻酔科学会公開の専門医試験過去問はHPから御覧ください(日本麻酔科学会HP)。
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問1 解答例
GCS: E3 V4 M4 11点 JCS:20
問2 解答例
-1) 右後頭葉に脳出血
-2) 右脳室内穿破
-3) ミッドラインシフト
-4) 脳溝消失
問3 解答例
誤っている準備
-1) ボルベン(ヒドロキシエチルデンプン 130,000 kDa):脳出血に禁忌のため使用不可
追加したい準備
-1) 中心静脈カテーテル
-2) 肺動脈カテーテル(右心機能が不良な場合)
-3) 経胸壁・経食道心エコー:右心機能、心室中隔の偏位をモニタリング
-4) NIRS(脳虚血モニタリングのため)
-5) BISモニター
-6) リニア型エコー:連続流型VADであり A-line 確保が困難な可能性に備える
問4 解答例
異常値は、PT-INRの延長です。
理由としては、ワーファリンを内服している影響でII,VII,IX,X因子が阻害されているからです。
補正に投与すべき薬剤は、
-1) プロトロンビン複合体製剤(ケイセントラ®)
-2) ビタミンK静注
-3) FFP
です。
問5 解答例
-1) プロトロンビン複合体製剤
-2) FFP
-3) ビタミンK静注
解説
プロトロンビン複合体製剤の投与量も確認しておきましょう。
問6 解答例
-1) すぐに挿管する
-2) 口腔内・気管内を吸引する
-3) 気管支ファイバーで観察し、吸引・洗浄を行う
-4) 胃管を挿入する
問7 解答例
-1) 体位変換前後でフロー・血圧・Pulsatility Index等に注意する(※体位変換で静脈還流が低下=相対的低容量→サッキングが起きやすい。)
-2) ドライブラインは常に固定、牽引・屈曲・圧迫を回避(ストレッチャー固定時も同様)。
-3) 固定具(アンカーデバイス)使用で出口部の外傷予防。
解説
LVAD患者での体位変換の注意点を問われる新問ですね。
LVADの仕組み、注意点について確認しておきましょう。
問8 解答例
TEE所見、CVP、PAP、SVRの値などから左室のボリューム不足を評価します。
疑われる場合は
-1) 輸液・輸血を行いボリューム負荷をかける
-2) フェニレフリンの投与を行いSVRを上昇させる
問9 解答例
-1) 脳:頭蓋骨欠損部の脳圧管理に注意する
→ 外減圧術後は脳がダイレクトに圧変化を受けやすく、浮腫や出血で容易に脳圧が上昇するため、頭部保護・ICPコントロールが重要。連続流型VADを植込まれた患者であり、術後早期に抗凝固療法が必要となるため、慎重に管理します。
-2) 肺:呼吸管理(過換気・低酸素血症の回避)に注意する
→ 高二酸化炭素血症や低酸素血症は脳血流を増加させ脳圧亢進を助長するため、ICU帰室後も適切な換気管理が必要。
-3) 循環系:血圧管理に注意する
→ 高血圧は再出血や脳浮腫を助長し、低血圧は脳灌流圧低下につながるため、至適範囲での血圧維持が不可欠。LVADを装着している患者のため左心室のボリュームも管理する。
問10 解答例
麻酔を担当しました〇〇です。術後の胸部X線写真で肺炎が疑われました。麻酔を開始する際、人工呼吸器に接続するために喉に挿管チューブを挿入したところ、手技中に口腔内に嘔吐物が確認されました。どの段階で誤嚥して嘔吐物が肺に入ったのかは特定できませんが、直ちに嘔吐物の除去を行いました。
今後の対応としては、肺炎が悪化しないように抗菌薬の投与と人工呼吸器によるサポートを行います。また、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という重篤な肺炎症が発生した場合、人工呼吸器のサポート期間が延びる可能性があり、その際には気管切開を行って喉に呼吸用の管を入れる処置が必要になるかもしれません。
経過については慎重に観察し、適時ご報告いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。