2022年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
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問1 解答例
発症日から2週間は最低空けます。
2週間より後の日程で執刀医と手術の日程を相談します。
悪性腫瘍なので一般的には早く行う方がいいと思います。
問2 解答例
-1) 心エコー検査:弁膜症や心房内血栓の有無を確認する
-2) 緑内障:アトロピン使用の可否を判断するため、開放隅角型か閉塞隅角型かを確認する
-3) 肥満:睡眠時無呼吸症候群の有無を確認し、気道確保困難のリスクを評価する
-4) 高血圧:普段の血圧や内服状況を確認する
-5) 糖尿病:インスリン使用の有無、網膜症・末梢神経障害・腎機能障害などの合併症を確認する
問3 解答例
高血圧1点、年齢1点、糖尿病1点、脳卒中2点で5点
問4 解答例
3日間です
休薬するメリット:出血量の減少
休薬するデメリット:出血量増加、Afによる下肢静脈血栓症、血栓塞栓症のリスクの上昇
問5 解答例
・頭蓋内圧に及ぼす影響:静脈灌流量の増加とうっ血性の頭蓋内圧上昇、気腹によるCO2増加で脳血管拡張などにより、頭蓋内圧が上昇します。
麻酔管理における対応:輸液の制限、頭低位の制限、PEEPを下げる、ピーク圧を下げる
・呼吸器系に及ぼす影響:気腹による腹腔内圧増加、頭低位、無気肺の形成や片肺挿管などが原因で胸郭コンプライアンスが低下します。
麻酔管理における対応:PEEPをかける、適宜リクルートメントを行う
問6 解答例
-1) 皮下気腫:胸部を触診し、握雪感を確認する
-2) 悪性高熱症:発熱の有無や尿所見を確認する
-3) 甲状腺クリーゼなど:発熱の有無や心拍数(HR)を確認する
-4) ソーダライムの劣化:色の変化や EtCO₂ モニタリングの下限を確認する
問7 解答例
-1) 気腹圧を下げる
-2) 開腹手術に移行する
問8 解答例
-1) 麻酔深度
-2) 体温
-3) 循環血液量
-4) EtCO₂
問9 解答例
投与量 5-10μg/kg/min 程度から始めて血圧を見ながらHRをコントロール.
目標心拍数 HR 110 以下
問10 解答例
-1) 気道浮腫の程度をカフリークテストで確認する
-2) 皮下気腫の程度や縦隔気腫の有無を、握雪感や胸部X線で確認する
-3) 血ガスで二酸化炭素(PaCO₂)の値を確認する
問11 解答例
-1) 下肢コンパートメント症候群
-2) 下肢動脈閉塞症
問12 解答例
-1) 6P
① Pain(疼痛)
② Pallor(蒼白)
③ Paralysis(運動麻痺)
④ Paresthesia(感覚異常)
⑤ Pressure(腫脹・緊満)
⑥ Pulselessness(脈拍消失)
-2) コンパートメント圧の上昇(拡張期血圧との差が 30 mmHg 以内 など)
-3) 高K血症
-4) ミオグロビン尿
-5) 高CK血症
解説
初期対応
コンパートメント症候群が疑われた場合、まずは四肢を締め付けている要因を取り除くことが重要です。具体的には、ギプスや副子などの外固定を外し、局所の圧迫を解除します。さらに、全身管理として低血圧があれば補正し、鎮痛薬を使用します。必要に応じて酸素投与を行い、全身の酸素供給を確保します。また、この病態では細胞壊死に伴う 高カリウム血症 や 横紋筋融解症 が進行し得るため、血清カリウム濃度のモニタリングを行い、異常があれば迅速に治療します。
外科的治療
保存的対応で改善しない場合や、コンパートメント内圧が高いままで症状が持続する場合は、緊急の筋膜切開術(fasciotomy) が必要です。これは患肢の筋膜全区画を十分に切開し、圧を下げることを目的とします。その際、皮膚も大きく切開して減圧を確実に行います。手術中には全ての筋肉を観察し、壊死して生存不可能な組織は切除します。