2022年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
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問1 解答例
1. 問題となる状態:ペースメーカー挿入患者
周術期に危惧されること:不整脈
管理上必要な情報:ペースメーカーの種類・設定の確認、自脈の有無、電気メスの使用の有無
2. 問題となる状態:両側内頸動脈狭窄症
周術期に危惧されること:脳梗塞
管理上必要な情報:普段の症状、CTやMRI、血管エコーによる狭窄の度合いの確認
3. 問題となる状態:大動脈弁狭窄症
周術期に危惧されること:心筋虚血、心不全、肺水腫
管理上必要な情報:普段の症状(意識消失、息切れ、胸痛)、心エコーでの評価(ASの重症度、EF、他の弁膜症の合併など)、抗血小板・凝固薬などの服薬状況
4. 問題となる状態:呼吸機能・COPD・肺切除後
周術期に危惧されること:COPD急性増悪、無気肺、術後長期人工呼吸管理の可能性、気胸など
管理上必要な情報:喫煙歴、呼吸機能検査、喀痰の量、胸部X線・CTの画像検査、新型コロナ感染症の検査、呼吸数や発熱、感染症の確認
5. 問題となる状態:PE、DVT
周術期に危惧されること:肺血栓塞栓症の発症(特に膝より上の血栓はリスクが高い)
管理上必要な情報:下肢・心エコー、造影CTによる血栓の評価、心電図(胸部誘導V1-4のT波陰転化や洞性頻脈、S1Q3T3パターン)
6. 問題となる状態:中咽頭がん放射線療法後
周術期に危惧されること:マスク換気・気道確保困難
管理上必要な情報:過去の麻酔チャート、マランパチー分類、開口状態、頸部後屈の可否確認による気道確保方法の検討
7. 問題となる状態:栄養状態
周術期に危惧されること:術後の回復遅延
管理上必要な情報:TP、Albの値、術前のADL
問2 解答例
①輸血の準備:術前からHb 9g/dlの貧血、Severe ASもあり、周術期輸血の可能性が高いため
②術中ペースメーカーの設定変更:電気メスによるペーシングフェイラー防止。ペーシング設定を変更する必要があるため
③循環器内科コンサルト:severe ASと静脈血栓について、フィルター挿入の必要性や周術期の評価についてコンサルトする
④IPACしないよう主科に依頼:静脈血栓があるため
問3 解答例
麻酔方法:脊髄くも膜下麻酔
使用薬剤:0.5%等比重ブピバカイン2cc(マーカイン20mg/4ml)
注意点:術中の血圧低下に対応する必要がある
選択した麻酔方法が優れる点:気道確保する必要がない。全身麻酔を行わないため周術期の心筋梗塞、脳虚血、梗塞に気がつきやすい。全身麻酔で使用する鎮静薬の影響による周術期の意識障害やせん妄のリスクを避けることができる。
麻酔方法:全身麻酔
使用薬剤:ミダゾラム、フェンタニル、ロクロニウム
注意点:術中の血圧低下に対応する必要がある
選択した麻酔方法が優れる点:気道確保をあらかじめしているため、急変時に気道確保する必要がない。
ペースメーカーの設定:
自脈があるならばDDD 60 back upのまま
自脈がなければ、AOO 70-80/min
自脈もなく、ブロックなどがあるなら、DOO 70-80/min
問4 解答例
①手術中断し、至急応援を呼ぶ。
②救急カート、除細動器、背板、挿管チューブを依頼。100%酸素投与する
③仰臥位に戻してCPRを行う。
④挿管し、気道確保。
問5 解答例
起きたこと:PEA
考えられること・鑑別方法
①循環血液量減少性:エコー(IVC,LVの虚脱)、輸液反応性評価
②閉塞性ショック(PE・タンポナーデ):心エコー(右室の拡張、血栓、心嚢液)を確認、CVPの上昇、頸静脈の怒張を確認
③アナフィラキシー:皮疹の有無、直前に使用した薬剤の確認、HR確認
④心原性ショック:心エコーで壁運動評価、心電図でST変化を確認
問6 解答例
麻酔を担当しました麻酔科の〇〇です。手術中状態が急変しまして心配蘇生を行い、現在は人工呼吸での管理を行なっております。はっきりとした原因は断定しかねますが、もとから心臓や肺の機能も正常とは言えず、さまざまな原因が重なって今回の事態が起きてしまったと考えております。現在は手術は終わりましたが、まだ余談を許さない状態が続いていますので、集中治療室にて経過を注意しながら見ていくことになります。今後何かあれば適宜ご報告させていただきます。引き続きよろしくお願いいたします。
問7 解答例
循環作動薬の使用:高容量アドレナリン、ノルアドレナリンを早めに減量していく。
呼吸器設定:酸素化が悪いがSpO2 94%程度を維持できる範囲で酸素を減量していく。一回換気量を6-8ml/kgと肺保護換気の設定に。循環が破綻しない範囲でPEEPを付与する。
鎮痛・鎮静の指示:冠動脈狭窄がある場合はデクスメデトミジンは避け、ミダゾラムとフェンタニルでRASS -1〜0程度を目安に調整します。