2023年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
日本麻酔科学会公開の専門医試験過去問はHPから御覧ください(日本麻酔科学会HP)。
DL方法:ログイン後、左のバナー「各種認定情報・資格申請」をクリック > 右のバナー「麻酔科専門医試験過去問題について」をクリック > 各種年代別の過去問をDLできます。
問1 解答例
項目例
最近の食事摂取状況・嘔吐の有無(誤嚥リスク評価)
前回胃手術(10年前)に関する詳細(癒着・胃内容物の排出遅延の可能性)
既往歴・内服薬の確認(低血圧リスク,周術期の血圧管理)
家族歴や本人の麻酔歴(悪性高熱症の家族歴が疑われる記載があるため,要確認)
ADL、運動耐容量の聴取など
解説
(1) 食事摂取状況・嘔吐歴
絞扼性イレウス(腸閉塞)では胃内容物が残っている可能性が極めて高く,誤嚥リスクが大きい。術前の絶食時間の十分さは期待できないため,迅速導入(RSI)や意識下気管挿管などの方針を検討する材料となる。
(2) 前回胃手術の内容
胃切除後や再建術(Billroth I/II など)の形態により,胃内容物の排出や解剖が変化している。また腹腔内に癒着が多く存在している可能性があるため,術中操作や麻酔管理に影響する。
(3) 既往症・内服薬
ACE阻害薬内服→周術期に血圧低下をきたしやすい。
麻酔前に休薬が推奨される場合もあるので要確認。
糖尿病,高血圧などがあれば血糖・血圧管理の必要性が高まる。
(4) 家族歴・本人の麻酔歴
悪性高熱症(MH)の疑いがある家族がいる,あるいは本人が過去の麻酔で発熱や異常反応を起こしたことがある場合は,使用する筋弛緩薬や揮発性麻酔薬の選択を大きく変える。ダントロレンの準備など特別な対策が必要。
問2 解答例
腸閉塞の状態ですので,胃や腸に内容物がたくさん残っている恐れがあります。前回の手術の影響で胃の大きさも小さいため、もし眠った状態で管を入れると,吐きやすくなり,肺に食べ物が入って重大な合併症を起こすリスクが高くなります。そのため,なるべく安全に気管に管を入れるために,意識が少しある状態でノドを麻酔してからゆっくり管を入れていきます。痛みや苦しさは最小限に抑えますが,完全に眠る前に安全に管を通すことで,吐いたりする危険を減らせると考えています。
問3 解答例
導入では、プロポフォール2mg/kg、ロクロニウム1mg/kg投与します。
維持では、プロポフォールはBISモニターをつけ、TCIで適量、筋弛緩薬も筋弛緩モニタリングを行いながら、適量投与します。
問4 解答例
いいえ,このままでは導入を開始しません。
吸入気酸素濃度が97%, 呼気酸素濃度が65%と、脱窒素化が完了していないためまだ行いません。
問5 解答例
(1) マスクをきちんと密着させ酸素流量を増加させます
(2) 深呼吸を促します。
問6 解答例
対応: ①即座に挿管をトライ、②口腔内吸引、③気管支ファイバーで気管内吸引
起きた事象:胃液の逆流・誤嚥
起き得る事象: 誤嚥性肺炎(メンデルソン症候群), ARDS など
問7 解答例
左はジャクソンリース回路、右はバッグバルブマスクです。
ジャクソンリース回路の利点は、デッドスペースが少なく,新鮮ガス流量をしっかり確保すれば高濃度酸素を供給できる、PEEPをかけられ陽圧換気が可能、高濃度酸素投与可能である点、欠点は、新鮮ガス流量が少ないと再呼吸が生じる点です
バッグバルブマスクは、酸素供給源がなくても使用できる利点、構造がシンプル等の利点がありますが、高濃度酸素が投与しにくい点、PEEPがかけられない点などの欠点があります。
本患者の搬送は高濃度の酸素を投与したく、PEEPもかけたいため、ジャクソンリースで行います。
問8 解答例
A: 3.4×6×10 = 204L.
B: 挿管患者にジャクソンリース回路を使用する際、再呼吸を防ぐには、分時換気量の2~3倍程度の流量が必要とされます。分時換気量が5Lの場合、10分間で必要な酸素流量は2~3×5×10 = 100~150Lとなります。
C: 流量の根拠として、安全係数0.8を考慮すると、100~150L ÷ 0.8 ≒ 125~177.5Lとなり、これは204Lを下回ります。そのため、再呼吸を防ぐには、酸素流量を5L/min程度に設定すれば十分と考えられます。
問9 解答例
(1) 悪性高熱素因患者であること
(2) 手術は腸管切除せずに終了したこと
(3) 麻酔導入時に誤嚥し、今後ARDS 発症リスクあり、血液ガスやレントゲンのフォローが必要であること
(4) 出血量、尿量等のIN-OUTのバランス
(5) 挿管チューブや点滴等の情報