2023年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
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問1 解答例
右肺が圧縮と含気の低下
気管の左側圧排と狭小化
問2 解答例
血液ガス: PaO2やPaCO2の評価
心エコー: 右房周囲や大血管に腫瘍の進展がないか、心収縮力、拡張力、壁運動異常などの評価
ファイバースコープ: 上気道や気管の狭窄の程度を評価
解説:上大静脈症候群(SVC症候群)の患者における術前検査の一例です。
1. 呼吸器系評価
胸部CT(造影付き)
・上大静脈の狭窄部位や範囲、腫瘍や血栓の有無、縦隔構造の詳細な評価を行う。
・気道への圧迫や肺の状態(無気肺、肺炎など)の評価も重要。
肺機能検査
・特に慢性肺疾患や腫瘍の影響が疑われる場合、肺活量や気道抵抗を評価する。
・手術時の呼吸管理計画に役立つ。
動脈血ガス分析(ABG)
・酸素化や二酸化炭素排出の評価を行い、低酸素血症や呼吸不全のリスクを確認する。
2. 心血管系評価
心エコー(TTEまたはTEE)
・心臓への腫瘍の浸潤や血栓の有無、心機能の評価を行う。
・右房圧や右心負荷の兆候を確認する。
静脈エコー
・下肢や体幹部の深部静脈血栓症(DVT)の評価を追加で行う。術中・術後の血栓塞栓症のリスクを把握する。
3. 血液検査
凝固機能検査
・術中・術後の出血リスクを評価(PT/INR、APTT、Dダイマーなど)。
・特に血栓や抗凝固療法が関与する場合は必須。
血算
・貧血や血小板数の評価を行い、輸血や血小板輸注の準備を検討。
腫瘍マーカー
・腫瘍性病変が原因の場合、腫瘍マーカー(CEA、AFP、CYFRA21-1など)の測定を追加で行うことがある。
4. 術中気道確保に向けた検討
ファイバースコープによる気道評価
・上気道や気管の狭窄の程度を直接評価し、術中挿管や気道管理計画に反映する。
・気道狭窄が重度の場合、術中の気道確保に備えた対応が必要。
麻酔科との協議
・気道確保や術中の静脈路確保について、麻酔科医と協議し計画を立てる。
5. 術前の腫瘍診断に関わる検査
組織生検
・腫瘍性病変が原因の場合、確定診断のために病理検査を実施。経皮的生検や気管支鏡による生検が選択肢となる。
まとめ
SVC症候群の術前評価では、呼吸・循環の状態を詳細に把握し、術中・術後の合併症リスクを最小化するための計画を立てることが重要です。特に画像診断、心肺機能評価、気道確保の準備がポイントとなります。
問3 解答例
呼吸のリスク
気管・気管支の圧排:腫瘍やリンパ節が大きく,特に気管が狭窄しやすい。
仰臥位でのさらに増悪:臥位になると腫瘍が後方へ移動して気道圧迫が強まる。麻酔導入後の筋弛緩で自発呼吸が消失すると,完全閉塞の危険もある。
循環のリスク
上大静脈の狭窄・閉塞:静脈還流不全により,麻酔導入時や体位変換時に著明な血圧低下を起こしうる。
肺動脈や心房への浸潤の可能性:肺血流障害・右心負荷の増大を引き起こし,術中低酸素血症や右心不全リスク。
問4 解答例
頸静脈ドップラーでは波形が乱れたり,逆流(reversal)や極端に低速の流れが見られる。
上大静脈の圧迫・狭窄により,頭頸部・上肢からの静脈還流が障害されていると考えられる。
問5 解答例
腫瘍が著しく気道・大血管を圧迫する場合,緊急VA-ECMOの導入など最悪の事態に備える必要がある。
麻酔導入によって気道が閉塞する可能性があるため、意識下でファイバー挿管を行います。
問6 解答例
末梢静脈は③
中心静脈は⑥
解説
上肢や頸部の静脈はすでにSVCSで還流障害があり,カテーテル挿入困難や血流不十分が想定される。
下半身の静脈に挿入すれば,上大静脈の病変部を通らない経路で確実に血液回収できる。
気道・心臓手術に備えて,確実なCVP測定や大量輸液経路を確保しやすい。
問7 解答例
肺血栓塞栓症
解説
Wellsスコアの項目も確認しておきましょう。
深部静脈血栓症(DVT)の臨床症状(腫脹・圧痛) 3
他の診断よりもPTEが最も可能性が高い 3
心拍数が100/分以上 1.5
最近の手術または4週間以内の長期臥床 1.5
既往歴:PTEまたはDVT 1.5
血痰 1
悪性腫瘍(治療中、寛解後6か月以内、または緩和ケア中) 1
問8 解答例
胸骨正中切開しているため, 外科医に直で心臓マッサージを依頼。
除細動器が準備し術野で5~10J 程度でショック
アドレナリン投与の準備
予め準備していたPCPSの準備
解説
ACLSプロトコールをしっかり確認しましょう。
問9 解答例
150J
問10 解答例
麻酔科の〇〇と申します。手術中に血栓が肺の血管につまったことにより命の危機に瀕しておりました。すぐに心臓マッサージや電気ショック等の適切な治療を行い、一命を取り留めましたが、肺に詰まってしまった血栓については今後各診療科の専門の医師と評価をして、引き続き治療をしていきましょう。まずは大事に至らず何よりでした。手術お疲れ様でした。