2024年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
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問1 解答例
– 凝固能(PT-INR, APTT)を確認。
– 背部刺青、皮膚感染の有無、解剖学的異常の有無を確認。
– 側臥位にて硬膜外カテーテルを入れられる体勢をとることが可能か確認。
– 血圧のコントロール状況(妊娠高血圧)、心機能(心不全・虚血性心疾患などの既往の有無)を確認。
– 局所麻酔薬やラテックスなどのアレルギー歴を確認。
問2 解答例
起こりうる合併症・副作用(3つ)
・局所麻酔薬中毒(LAST:Local Anesthetic Systemic Toxicity)
・高いレベルの脊髄くも膜下ブロック(high spinal),または全脊麻(total spinal)
・アナフィラキシーなどのアレルギー反応
初発症状(例)
・局所麻酔薬中毒(LAST)の初期徴候
– 口唇周囲や舌のしびれ,金属味,耳鳴り,めまい,振戦, 興奮状態 など
・高い脊髄くも膜下ブロックの初期徴候
– 急激な血圧低下,呼吸困難感,上肢まで強い感覚ブロック,意識レベル低下 など
・アナフィラキシー初期症状
– 皮膚症状(発疹),掻痒感,血圧低下,呼吸苦 など
解説
・局所麻酔薬中毒(LAST:Local Anesthetic Systemic Toxicity)
- 静脈内誤注入,過量投与,組織吸収増加などで血中濃度が上昇し 中枢神経毒性・心毒性 を呈する。
・高いレベルの脊髄くも膜下ブロック(high spinal),または全脊麻(total spinal)
- 硬膜外麻酔のつもりが くも膜下腔へ穿刺・薬液移行 してしまう場合に発生。
- 急激な血圧低下,呼吸抑制・意識消失 などを招く。
・アナフィラキシーなどのアレルギー反応
- 局所麻酔薬自体または添加薬(防腐剤など)によるアナフィラキシー反応。
- じんましん,血圧低下,気道浮腫,呼吸苦 などが発生。
問3 解答例
必要薬剤や気道確保器具などを準備。
産科医との連携と対応方針
・状況を即時共有し、胎児機能不全の可能性が高い場合は帝王切開への速やかな移行を検討。
麻酔科医として以下を同時進行で対策する。
・母体循環動態の安定化
– 血圧低下があれば補液・昇圧薬投与(エフェドリン,フェニレフリンなど)を実施。
– 酸素投与(マスク酸素)、体位調整(左側臥位など)で子宮胎盤血流を確保。
・硬膜外麻酔の再調整
– 無痛分娩の硬膜外麻酔を行っている場合、速やかに手術レベルまで鎮痛・鎮静を調整。
– さらに緊急度が高く、分娩遷延しそうであれば全身麻酔の準備も考慮。
・麻酔管理と手術対応準備
– 麻酔科として手術室へ急行可能な体制を整える。
解説
・CTGで遅発一過性徐脈を繰り返す場合は、胎児低酸素血症を強く疑う。
・母体側の低血圧や過剰な子宮収縮、胎盤不全などが関与し、このまま経膣分娩を継続すると児に危険が及ぶ可能性がある。
・速やかに産科医と連携し、帝王切開へ切り替えることを検討。
・無痛分娩中で硬膜外カテーテルが留置されている場合、追加投薬で手術麻酔レベルに短時間で移行可能。
・しかし、十分なブロックが得られない、あるいは緊急度が非常に高い場合は全身麻酔を選択することも多い。
問4 解答例
・脊髄くも膜下麻酔(脊麻,SAB)
メリット
- 麻酔導入が迅速で、確実な鎮痛・運動遮断が得られる。
- 薬剤量が少なく、母体への全身的影響が少ない。
デメリット
- 血圧低下が急激かつ著明 になりやすく、管理が必要。
- 一度注入した薬剤を調節しにくい。
- 高位脊麻(呼吸抑制、意識レベル低下) や 穿刺後頭痛 のリスクがある。
・硬膜外麻酔(EPA)
メリット
- 既に 無痛分娩でカテーテル留置中 であれば、追加投与で手術麻酔レベルに移行可能。
- 血圧低下が脊麻ほど急激ではなく、持続的に投与量を調整できる。
- 手術後も 鎮痛目的に持続的に使用可能。
デメリット
- 脊麻ほどの速効性はなく、麻酔が十分に効くまでにやや時間がかかる。
- 鎮痛が部分的に不十分になり、痛みが残る場合がある。
- 全身投与量が増える分、局所麻酔薬中毒(LAST)のリスクが上がる可能性がある。
・全身麻酔(GA)
メリット
- 最も速やかに気道確保し、帝王切開を開始できる。
- 麻酔レベルの調整が容易で、出血多量時も管理しやすい。
デメリット
- 母体気道確保のリスク(妊婦は 気道浮腫や胃内容物による誤嚥リスクが高い)。
- 全身麻酔薬の一部が胎児へ移行し、新生児の呼吸抑制を引き起こすリスクがある。
- 覚醒時に 血圧・心拍数が変動しやすく、術後鎮痛管理を別途考える必要がある。
解説:麻酔法の選択について
・緊急度が高いほど、導入の速さと確実性が最重視される。
・最終的には 「今ある硬膜外で対応できるか」「時間的余裕があるか」「全身麻酔が安全に行えるか」 などを総合評価し決定する。
・本症例のように 無痛分娩中で硬膜外カテーテルが機能していれば、追加投与で対応することが多い。
・しかし、十分な効果が得られない場合や、より迅速な対応が必要なら全身麻酔に切り替える。
問5 解答例
疑う合併症およびその原因
・疑う合併症
- 局所麻酔薬中毒(LAST)
・原因
- 硬膜外カテーテルが 血管内やその近くに位置しており、リドカインが部分的に血管内へ流入した可能性が高い。
全身麻酔の導入(使用薬剤と投与量の例)
・代表的な薬剤
- プロポフォール:2 mg/kg 前後
- ロクロニウム:1.0 mg/kg
問6 解答例
脂肪製剤の投与方法(一例)
・何%製剤を用意するか
- 一般的に 20% 脂肪乳剤(市販の Intralipid® 20% など)を使用。
初期投与(ボーラス)と追加投与
・初期ボーラス
- 1.5 mL/kg(20% 製剤)を約 1 分で急速静注。
・開始 5 分後に十分な改善が得られない場合の追加投与
- 同量(1.5 mL/kg)のボーラスを追加可能(最大 2~3 回まで)。
維持投与量
・ボーラス投与後に 0.25 mL/kg/min で点滴を継続。
・循環動態が安定しなければ 0.5 mL/kg/min に増量。
・通常は総投与量 10~12 mL/kg を上限の目安とする。
循環の回復、安定後の投与
・循環動態が改善しても少なくとも 10 分以上は点滴を続ける。
・その後は状態を見て漸減または終了。
・痙攣などの中枢神経症状が続く場合も、同様の方法でボーラス+持続点滴を繰り返す。
問7 解答例
・オピオイドの残存
・筋弛緩薬の再クラーレ化
・局所麻酔中毒
・脳血管障害(脳出血,脳梗塞など)
- 妊娠高血圧症候群やHELLP症候群 の合併で 脳出血・脳梗塞を起こす場合がある。
解説
全身麻酔後の覚醒遅延の鑑別についての問題ですね。
過去に何度も問われていますので、スラスラと鑑別をいえるようにしておきましょう。
問8 解答例
自己紹介
・麻酔を担当しました〇〇と申します。
これまでの経過
・計画分娩で無痛分娩を予定していたが、陣痛に伴い胎児の状態が不安定であったため帝王切開を行うことになった。
・硬膜外カテーテルから局所麻酔を追加してところ局所麻酔中毒を疑う症状が出たため、すぐに中止し治療薬を投与し、全身麻酔で手術を行うことにした。
・手術は終了し、循環動態や出血は安定しているが、意識が回復していない。
頭部CTの目的
・覚醒遅延の原因を評価するため、中枢神経系の合併症(脳出血や脳梗塞など)がないかを確認する。
今後の経過
・ICUでは集中管理のもと、呼吸・循環・神経学的評価を厳重に行う。
・原因が解明され次第、適切な治療を行い、できるだけ早期の意識回復・社会復帰を目指す。
・意識障害の原因によっては長期のリハビリなどが必要になる可能性もある。
家族への配慮
・不安が大きい状況であるため、できるだけわかりやすく、正確な情報をこまめに提供する。
・母体の状態は安定していること、ただし意識が戻っていないため慎重な経過観察が必要であることを伝える。
・小児の状態については小児科医から詳しく説明がある旨を案内する。