2023年の麻酔科専門医試験 口頭試問の過去問解説を行っていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
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問1 解答例
・開口制限(開口 3 cm、マランパチ分類 IV)による喉頭展開の難しさ
・中咽頭がん放射線治療既往による軟部組織硬化・繊維化
・肥満(BMI 35)によるマスク換気・挿管困難リスクの上昇
・COPD・睡眠時無呼吸症候群(SAS)による術後換気不全リスク
問2 解答例
(1)肺高血圧や右心不全の進行
理由:肺全摘に伴い肺血管床が大きく減少し、肺血管抵抗が急激に上昇する可能性がある
(2)術後呼吸不全
理由:残存肺容量の減少と肺実質の切除によりガス交換能力が低下しやすい
(3)気管支断端瘻や肺瘻
理由:全摘後の気管支断端部が感染や血流不良で破綻すると瘻を形成する危険がある
解説
片肺を摘出するため肺血管抵抗が急上昇し、右室に過度の負荷がかかる
健側肺のみでガス交換を賄うため、特にCOPDや肥満がある患者では呼吸不全リスクが高い
肺全摘後の断端は血流も乏しく瘻形成のリスクが他の肺葉切除より大きい
問3 解答例
ノーマルチューブにチューブエクスチェンジャーを挿入し, それをガイドにビデオ喉頭鏡で観察しながらDLT を挿入します
問4 解答例
・二腔チューブの利点
(1) 分離肺換気の確実性が高い(左右肺を切り替えやすい)
(2) 片肺換気中の吸引や内視鏡操作が容易
(3) カフ調整がブロッカーに比べて容易。ズレにくい。
・二腔チューブの欠点
(1) チューブ径が大きく、挿管難易度が上昇(気道損傷リスクも増す)
問5 解答例
「肺動脈圧波形(PAP)」
解説
肺動脈カテーテルがwedged状態になっている場合は、速やかに位置調整が必要です。
wedged状態で放置すると先端部が肺動脈を閉塞し、血流が遮断され肺梗塞に至る危険がある。
バルーン膨張やカテーテルの先端が肺動脈壁を圧迫すると、血管損傷や出血が起こり得る。
問6 解答例
問題:肺動脈圧が表示されるはずが、楔入圧波形になっています。
対応:カテーテルをバルーンが虚脱していることを確認のうえ少し引き抜く。肺動脈圧波形に変化するのを確認する。ハーフクランプし楔入圧波形に戻る箇所で固定する。
問7 解答例
・(1) 肺梗塞(カテーテル先端による血流遮断)
・(2) 肺出血(バルーン留置による局所血管損傷)
解説
wedged状態で放置すると先端部が肺動脈を閉塞し、血流が遮断され肺梗塞に至る危険がある
バルーン膨張やカテーテルの先端が肺動脈壁を圧迫すると、血管損傷や出血が起こり得る。
ゴムでできていることも忘れないようにしましょう。
72時間以上留置すると合併症が有意に上昇します。
問8 解答例
・(1) 右室圧・肺動脈圧の上昇
・(2) 中心静脈圧(CVP)の上昇
解説
肺動脈をクランプすると右室からの拍出先が減少し、右室圧や肺動脈圧が急上昇する可能性がある。
血液が右心系に貯留し、CVPも上がることがある。
ただし、元の肺血管抵抗により上昇の度合いは異なる。
問9 解答例
(1) Volume不足:鑑別としては、SVVやTEEでのボリューム評価、胸水の評価
(2) 肺塞栓:PETCO2の低下, TEEで肺動脈の評価
(3) アナフィラキシー:顔面~前胸部の紅潮や気管狭窄による気道内圧上昇
(4) 心筋虚血: 心電図やTEEで心臓の評価
(5) 緊張性気胸:肺エコーでlung slidingなし、聴診で左右差あり、気道内圧上昇確認
問10 解答例
原因:出血性ショック
根拠としては、CVPの低下、気道内圧の変化なし、
TTEで変化なしで、消去法で出血の可能性が高い。
解説
肺全摘後の大出血は、気管支動脈や胸壁側枝からの出血が多く、表在化しにくいためドレーンの閉塞などで見逃される可能性がある。
術後の胸部X線撮影で血胸が疑われ、ドレーン操作で大量排液があれば出血性ショックを疑う。
気道内出血でなければ気管支動脈が出血源となり大量出血に至る危険が高い。
問11 解答例
(1) CO2ナルコーシスに注意:右肺全摘後は左肺のみでのガス交換となり、換気容量が限られるため
(2) 肺水腫にならないよう注意:肺全摘後は肺全摘後肺水腫のリスクあり、出血分の補正により大量輸液・輸血によって、肺水腫になりやすいため。
(3) 気道確保の困難リスク:放射線治療既往+肥満による挿管困難が残存し、術後の気道浮腫や出血でさらに困難度が上がるため。